全く借入がない人や少ししか借入がない人はどうでもいいかも知れませんが、借入が多い人や他社で返済が遅れている人はどこまで知られているのか気になるところだと思います。ここでは消費者金融で借りる場合に、貸金業者がどこまで調べるかを確認していきます。
貸金業法と信用情報調査
そもそも消費者金融・サラ金は昭和の頃から多重債務などの問題がしばしば問題になっていました。当時は年収300万くらいのサラリーマンでも無担保でも200万くらいは融資を受けられました。無職でも家族から回収できそうなら融資することもありましたし、女性は回収できなくても水商売や風俗で無理やり働かせる事を想定して何百万も融資することが当たり前のように行われていました。そもそも貸金自体がヤクザな商売だったので、取り立ても脅迫・嫌がらせ・人身売買まがいのやり方が横行していました。
当時はグレーゾーン金利が存在していて利息は30%近くになることもあり、200万借りていれば利息だけで月に5万です。違法な貸金業者も規制が緩かったのでそれ以上の利息をとる高利貸しも横行していました。また融資の際に手数料や抱合せの契約などで利息とは別の名目でお金をむしり取る手法も公然と行われていました。「30万を金利20%で貸すけど手数料で引くから渡すのは25万です」なんていうやり方です。
それでも「借りた金を返さない人が悪い」「高利といっても本人が承諾したなら仕方ない」という風潮が一般的で、警察もほとんど介入せず借金をすると本当に地獄から抜け出せないような時代が続いていました。日本人にとってそれが当たり前になり過ぎていたのです。
ただ戦後が終わり社会が成熟してくると、そのような無法がクローズアップされるようになりました。
- 利息は20%のはずなのにそれ以上を要求することが認められている
- 返済できない事がわかっているのに貸し付けて債務者の人生を破壊している
- 脅迫も強要も不法侵入も威力業務妨害も人身売買も明らかに違法なのに「返済しない」というだけで黙認されている
いままでは無視されていた多重債務が原因と思われる事件も報道されるようになるとこういった声が徐々に大きくなり、ついに平成19年に貸金業法が大幅に改正されました。目的は債務者の保護と貸金業界の健全化がメインその改正貸金業法の中でも債務者にも貸金業者にも大きな影響を与えたのが「総量規制」と「グレーゾーン金利の違法化」です。
現在の融資の制限と信用情報
貸金業法の改正以降、貸金業にはいろいろな制限が導入されていますが、その中でも影響が大きいものが総量規制です。
総量規制(収入の1/3まで)
これは融資の申込みがあったら、本人の収入の3分の1が借りられる上限というものです。100万の年収なら上限は33万円、300万円なら100万円までということになり、当然無職では融資を受けることはできません。専業主婦で収入がない場合は夫に確認をとって夫の収入に対して総量規制の範囲内なら借りることができますが、夫に隠れて借金をするということができません。
貸金業者がこれを守らなければ、営業停止などの行政処分や罰金や懲役刑などの刑事罰があります。改正される前も法律はあってもある程度見逃されていましたが、現在は債務者が通報すればすぐに処罰されるのでまともな貸金業者はちゃんと守っています。
信用情報
この総量規制を守らせるための法律が貸金業法の13条です。
第十三条 貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合には、顧客等の収入又は収益その他の資力、信用、借入れの状況、返済計画その他の返済能力に関する事項を調査しなければならない。 2 貸金業者が個人である顧客等と貸付けの契約(極度方式貸付けに係る契約その他の内閣府令で定める貸付けの契約を除く。)を締結しようとする場合には、前項の規定による調査を行うに際し、指定信用情報機関が保有する信用情報を使用しなければならない。 3 貸金業者は、前項の場合において、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、第一項の規定による調査を行うに際し、資金需要者である個人の顧客(以下この節において「個人顧客」という。)から源泉徴収票(所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二百二十六条第一項に規定する源泉徴収票をいう。以下この項及び第十三条の三第三項において同じ。)その他の当該個人顧客の収入又は収益その他の資力を明らかにする事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録として内閣府令で定めるものの提出又は提供を受けなければならない。ただし、貸金業者が既に当該個人顧客の源泉徴収票その他の当該個人顧客の収入又は収益その他の資力を明らかにする事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録として内閣府令で定めるものの提出又は提供を受けている場合は、この限りでない。 一 次に掲げる金額を合算した額(次号イにおいて「当該貸金業者合算額」という。)が五十万円を超える場合 イ 当該貸付けの契約(貸付けに係る契約に限る。ロにおいて同じ。)に係る貸付けの金額(極度方式基本契約にあつては、極度額(当該貸金業者が当該個人顧客に対し当該極度方式基本契約に基づく極度方式貸付けの元本の残高の上限として極度額を下回る額を提示する場合にあつては、当該下回る額)) ロ 当該個人顧客と当該貸付けの契約以外の貸付けに係る契約を締結しているときは、その貸付けの残高(極度方式基本契約にあつては、極度額(当該貸金業者が当該個人顧客に対し当該極度方式基本契約に基づく極度方式貸付けの元本の残高の上限として極度額を下回る額を提示している場合にあつては、当該下回る額))の合計額 二 次に掲げる金額を合算した額(次条第二項において「個人顧客合算額」という。)が百万円を超える場合(前号に掲げる場合を除く。) イ 当該貸金業者合算額 ロ 指定信用情報機関から提供を受けた信用情報により判明した当該個人顧客に対する当該貸金業者以外の貸金業者の貸付けの残高の合計額 4 貸金業者は、顧客等と貸付けの契約を締結した場合には、内閣府令で定めるところにより、第一項の規定による調査に関する記録を作成し、これを保存しなければならない。 5 前各項の規定は、極度方式基本契約の極度額(貸金業者が極度方式基本契約の相手方に対し当該極度方式基本契約に基づく極度方式貸付けの元本の残高の上限として極度額を下回る額を提示している場合にあつては、当該下回る額)を増額する場合(当該極度方式基本契約の相手方の利益の保護に支障を生ずることがない場合として内閣府令で定めるものを除く。)について準用する。この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める。 |
ちょっと長いので要約すると
- 融資する時は必ずCICやJICCなどの信用情報機関で調査をしなさい
- 自社で50万を超えるか、他社と合わせて100万を超える場合は、収入が確認できる資料を必ずもらいなさい
という感じですね。
信用情報で調べられること
特定信用情報機関はCIC、JICC、KSCの3種類がありますが、それぞれの情報期間内で共有している情報と、他の機関と共有している情報ですこし違います。ここでは貸金業者がみているCICとJICCに加入している業者がわかる内容をみていきましょう。
他社の借入れ日・借入れ額 | 他の金融機関で借りている件数や金額などが1円単位でわかりますが、どこの会社で借りたかまではわかりません。加入している貸金業者は、原則当日報告が義務なので毎日更新されています。完済すると5年ほどで情報は消せるようになりますが、返済せずに放置されている債務は残っています。10年前に飛ばした融資も金額や借りた日などが詳細に残っています。 |
割賦・ローン | 総量規制の対象外のローンやショッピングなどの債務も参考情報として信用情報機関に提供されています。 |
申込情報 | 貸金の融資の申込み、クレジットやローンの審査など、信用情報機関に問い合わせがあった日、名前、電話番号などが共有されています。いろいろな貸金業者に申し込んでいると、ここのリストがぶわーっと長くなっていて貸金業者に警戒されます。 |
過去の負債状況 | 過去に毎月どのくらい負債があったかというのが1年分ほど表示されます。「この人ずっと総量規制ギリギリだな」とか「急にお金借り始めてるな」とかいうことがわかります。 |
職場・住所・電話 | 最新の申込みで本人が申告した、勤務先の情報や住所・電話番号などの個人情報が記載されるだけでなく、ローンを組んだ時に申告した際のものも調べられます。 |
延滞情報 | 特に同じ信用情報機関の借入については、借りた日、次の返済予定日、前回の延滞日数などかなり細かく登録されています。今日の返済ができなくて融資を申し込んだら「この人今日の融資の返済するのにうちに申し込んだのかな」なんて思われてしまいます。 |
過去の事故情報 | 延滞、破産申立、債権回収、民事再生など、金融の事故の情報も共有されます。これは特に要注意事項で赤字などで表示されており、融資の審査に大きな影響を与えています。ただ「過払い金の返還請求」は事故に当たらないのでここに記載してはいけないことになっています。 |
保証履行 | 保証契約のある債務の支払いができず、保証会社が債務の支払いを行った場合も、上記の事故と同じような形で情報が共有されます。 |
紐付け情報 | 氏名・電話番号・生年月日などが類似している情報も、関連情報として調べることができます。名前の読み方を少し変えている悪質な申込みなどもここでわかるようになっています。 |
他機関の情報 | 自分が所属している信用情報機関以外の信用情報でも、上記の情報の少し簡単にまとめたようなものが共有されています。 |
逆に信用情報ではわからないこと
信用情報を調べると他社の借入情報が上記のようにかなり詳しくわかってしまいます。ただ逆に信用情報を調べてもわからないこと、それが「収入」です。信用情報機関に登録するのは主に融資の情報なので、収入については詳しく登録しません。
また融資の申込みで一番ウソが多いのも収入です。まともな貸金業者は総量規制を守るために年収の1/3しか貸してくれないので、すでに融資の枠が総量規制ギリギリの人が闇金以外で借りようと思ったらウソを書くしかないからです。
貸金業者が収入を調べる方法
本人に資料をもらう
まず融資の申込みの際に年収を聞きますが、その際に収入を証明できる資料を要求します。特に自社で50万以上か他社も合わせて100万を超える場合は、直近2ヶ月の給与明細や1年分の賞与などの資料を受け取り、年収を確認しなければ融資の審査を通せません。融資を申し込む際には、上記の資料や銀行の入金明細や役所が発行する納税証明などを用意しておきましょう。
他社の貸付状況から推測する
総量規制ギリギリの場合は、過去の借入が毎月だいたい同じくらいに金額になっています。例えば毎月128~130万くらい債務が残っている人は「年収が390万くらいなんだろうな」と考えられるわけです。でその人が410万とか申込みに書くと「あー借りられないからちょっと盛ってるだろうな」と思われるわけです。
職業で計算する
公務員・大企業・団体職員などある程度安定している職業だと、年齢、勤続年数、役職がわかれば年収がほぼ計算できてしまいます。貸金業者が大きければ大きいほどそうした過去の顧客データをたくさん持っているので、職種によってはかなり正確に年収を計算することができます。